小児疾患集
乳児期3~6か月
首が座り、しっかりあやすと笑う時期です。かわいくてしょうがない時期ですが、目をはなすと寝返りをして転落してしまうことがあり注意が必要です。
① 発熱
予防接種後や明らかな感冒症状がなくても、『39度以上』の発熱を認める場合は速やかに医療機関への相談や受診が必要です。尿路感染症や菌血症といった重篤な細菌感染症だけではなく川崎病といった特異的急性期治療が必要な病気も隠れていることがあります。乳児期はまだいろんな症状がそろいにくく、増悪スピードが速いのが特徴です。体の代償・予備力も小さいので、観察するポイントをおさえておきましょう。
② 嘔吐、下痢、血便
いわゆる感染性胃腸炎がもっとも原因として多いですが、腸重積症やメッケル憩室といった外科治療が必要なものや、ビタミンK欠乏、二次性乳糖不耐、消化管アレルギーなどの内科管理が必要なもの、消化管リンパ濾胞など生理的なものがあります。全身状態と発育歴、便性を直接確認させてもらう必要があります。
また、嘔吐や下痢には頭蓋内や心臓、内分泌の病気が隠れていることもあります。医療機関で、制吐剤や整腸剤をもらっても、改善なく、顔色が悪い場合などはもう一度医療機関を受診する必要があります。
③ 鼻水、鼻閉、咳、喘鳴
この時期の気道症状は気道感染症によるもの、アレルギーによるもの、消化管機能異常(胃食道逆流や嚥下機能低下、消化管狭窄など)に大きく分けられます。もちろん、気道に影響を与える部位に『できもの』や『異物』があっても起こります。
長引く気道症状の場合は気道感染や過敏性、アレルギーコントロールはもちろん、焦点をしぼった気道開通状況や周囲臓器との関連や影響も考慮していきます。どんなときに症状があって、どんなときに症状がないか確認して医療機関で報告できるようにしておきましょう。
④ 湿疹
乳児湿疹の他に、アトピー性湿疹で受診される患者さんが多い時期です。離乳食との関連もでてきて、過剰な食品除去にならないように、日ごろからのスキンケアでまずはコントロールが必要です。きちんとスキンケアをしても、週~月単位で改善がみられない場合は、血液検査などでアレルゲンを調べる必要があります。
アレルギー検査でわかるものは感作状態で、実際に発症しているかどうかは別ものです。離乳食の除去食物は最低限におさえる必要があります。移動範囲も増えてきますので、生活環境の評価や入浴の仕方、衣服などもチェックが必要です。
⑤ 体重増加不良
多くは、哺乳量不足です。体重を増やすための体重1kgあたりの哺乳量は予測できるのです。エネルギーをたくさん使ってしまう病気や飲みたくてもうまく飲めない病気がかくれていないか調査する必要があります。また、飲めていてもうまく吸収できていない場合もあります。
心不全や呼吸窮迫、消化管吸収障害(アレルギーや乳糖不耐など)や甲状腺機能異常、神経・筋肉の病気でも体重増加不良となります。親子のスキンシップ、愛着形成、栄養学的な母乳栄養のメリット、デメリットをみんなで共有していきましょう。
⑥ 首の座りの遅れ
早く生まれたお子さんはいわゆる予定日を生まれた日としてみてみる『修正月齢』で成長発達を評価していく時期です。実際は生後4か月でもひと月早く生まれたお子さんは『修正③か月』となります。
修正月齢で生後4か月すぎても首が座らない場合は継続的な診察を受けながら、場合によっては専門医療機関で原因を調べる必要があります。
自宅での理学療法で伸びていくお子さんもいますが、特異的治療を行う必要があるお子さんもいます。真に首の座りが遅れているかどうか、早めの専門医療機関受診が必要なのかどうか、診察を受ける必要があります。
⑦ 便秘
うまく腹圧がかからなかったり、何らかの感染症で発熱したり、消化管の蠕動が落ちたときに発症することが多い年齢です。一度、医療機関で便栓を浣腸でとってもらい、腹部の状態と便の性状を評価してもらいましょう。継続的観察や追加の検査が必要なのか判断してもらう必要があります。
⑧ あざ(蒙古斑と血管腫)
生まれつきから、おしりや背部の下部にみられるうすい灰青白色から黒色のものを蒙古斑といい、その他の部位にあるものを異所性蒙古斑といいます。多くは蒙古斑と同じく、5.6歳までに自然に消失し目立たなくなります。しかし、生下時にはなかったものが、新たに出てきた場合は治療介入が必要となることがあります。
血管腫も同様、先天性と乳児血管腫にわかれます。特に乳児血管腫は生後半年にかけて増大し、みため、周囲への圧迫による症状がでてくることがあります。血管腫の場所や大きさや性状によってレーザーや内服治療を生後早期から行う場合もあります。範囲や盛りあがりが進行し、気になる場合はまずは相談してみましょう。
⑨ 鼡径ヘルニア、陰嚢水腫
陰嚢や鼠径部が不自然に隆起し左右差があるときに気付かれます。入浴後やおむつ替えのときに啼泣した場合に明らかであれば、できれば写真をとり受診しましょう。嘔吐や不機嫌が持続、隆起したところが赤く、触ると痛がる場合は時間外や夜間でも受診が必要です。腹部の中の臓器が外に無理に飛び出そうとして、しめつけれていることがあります。つまったものが血流不全となる前に解除する必要があります。基本的には経過観察を行いながら、時期をみて1-2歳で手術を計画します。場合によっては準緊急的に早期手術計画が必要なお子さんもいます。
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